logic system continued.

http;//d.hatena.ne.jp/hello-m/ ではてなダイアリーで12年間書いてたブログ『logic system』から引っ越してきたので、その続き、という意味での『continued』。

『ニライカナイからの手紙』。

ぶっちゃけて言うとQuiz Road Cupの感想を端折ったのはこっちを時間かけて書きたかったからです。
id:hello-m:20050605#p3で書いた通り、前売券買ったんですが、17日までしかやってないって事で、仕事やら予定やら体調調整やらを考えると今日しか見に行く日が無い。と言う訳でわざわざ銀座の東劇まで行って見て来ました。本当は今日は仕事の打ち合わせが夕方からあるはずだったので、早めに起きて見てから行くつもりだったんですが、打ち合わせが明日にずれ込んでしまったので、気楽に見に行けることに。なのに着いたのは何故か上映開始ギリギリ。単館上映だから予告なしでそのままスタートするかも、とか不安だったんですが、予告がちゃんと15分あったおかげで助かった。と言う訳でたぶんネタバレはあまり無いはずなんですが、一応感想は色反転しておきます。でもキーワードが入ってたら浮かび上がってしまうので注意。先入観無しで見に行きたかったら読み飛ばして下さい。

オープニングのオフフォーカスからして画としては悪くなかったんですが、このタッチで行くんだったらもっと小さいところで上映しても良かったんじゃない?と言う感じ。まぁ月曜日の夕方の回なんてガラガラに決まってんだから仕方無いんだけど、やっぱしこう言う画ならもっと狭いところの方が映えると思う。っていきなり上映館の批判から入ってどうする。
とりあえずの印象として、竹富島の住民やら雰囲気やらがすごく暖かく描写されてて、対して上京後に風希が会う人達がかなり冷たく描写されている。よくない、これは非常によくない。離島文化を美化し過ぎるのも、東京を「冷たい街」と表現するのも、どっちもあまりにもありがちで、しかも誤解を招く表現。どっちも得しないんだよ、こう言う表現は。沖縄の離島を舞台にした映画と言うことで、自然と選定眼が厳しくなっていた面もあったと思うが、それを差引いてもやっぱり我慢できなかった。後からプログラムを見て、例えば高校生が卒業後にどこに行くかと言う事はリアルな問題だから…という風に、出来るだけ島の文化をリアルに描写すると言う姿勢は評価出来るが、そのあたりを多少端折り過ぎてる面があった気がする。
ではどこに時間を割いていたのかと言うと、主人公のキャラクターを徹底的に描写すること。これはこの映画の趣旨としては間違ってない。むしろこの蒼井優の描写は、時間が経つごとの服装の変化やなまりの消え方など細部にまで渡り、本人の演技もあって素晴らしいものに仕上がっている。個々のシーンの間の取り方も良い。ただいかんせん、ストーリーが人情ドラマとして出来過ぎなんじゃないか、と言う疑問が拭えない。街の人たちに写真を撮っていいかと問うような場面などで、全ての親子が協力してくれるなんて、東京ではあるはずのない光景だし。
だがしかし、前半で浮かんでは消え浮かんでは消えていったこうした疑問や不安は、クライマックスにかけて一気に払拭される事になり、この転換に引き込まれる。ここだけはぜひ実際に見て欲しいので細かいネタバレはしないが、「非常によくない」と前述した離島と東京のそれぞれの文化の描写に対する不満も、このクライマックスでほぼ完全に消化される。特に、「所詮は上京物語だろ」と思わずにはいられなかった部分が、たった一つのセリフで一気に解消されたのは見事としか言い様が無かった。ただ不満があるとしたら、最後の長回しがあまりにも長すぎて、一抹の冗長さを感じてしまったこと。あのシーンにあれくらい時間をかけるのは絶対に必要なんだけど、その長さのバランスを見誤ると、それがくどさに変わってしまう。少なくとも自分は「長すぎる」と感じてしまったけど、あのロングカットをどう短縮するよ、と思うとあまりにも難しいんだよな。このまま終わってしまったらどうしよう、と思ったけど、ラストシーンがちゃんとあったのでよかった。でもこれにしても、もうちょっと東京でのシーンがあっても良かったと思ったな。

過去に『ロスト・イン・トランスレーション』を10段階評価で7、『下妻物語』を6〜6.5としました*1。これらの評価を相対的に踏まえて、『ニライカナイからの手紙』は…7〜8。前半のペースのままならたぶん5〜6程度だったんですが、クライマックスで大きく評価が上がりました。入替制じゃなかったから、そのまま居残って次の回もう一度見てやろうかと思ったくらい。エンディングで流れる永山尚太の『太陽ぬ花』。やはり映えますな、この曲。
で、これから見に行く人にとりあえず一言。時間があれば、吉祥寺の『南ぬニライカナイ』に立ち寄ってみて下さい。劇中に井の頭公園と吉祥寺の町並みが登場するんですが、ちょうど『南ぬニライカナイ』を通り過ぎると、劇中のシーンに登場するあたりに出られるんです。あのシーンがあったから、インストアライブも『ニライカナイ本店』じゃなくて『南ぬニライカナイ』でやったのかな、と思ってしまいました。少なくともインストアの前に、あのへんで散歩しておいたおかげで、劇中のシーンにより共感出来ました。ついでに『南ぬニライカナイ』でランチでも…って回し者か俺は。
しかしこの映画、本土に先駆けて沖縄では今は亡き*2桜坂シネコン琉映で2月に上映されたそうですが、沖縄での反応はどうだったんでしょうねぇ。少なくとも東京で見てこう言う感想だった訳で、沖縄ではどうだったのか、実に気になります。どなたか感想でも頂ければと思うんですが、ネタバレになりそうだったらメールでよろしくです。

*1:ちなみに書かなかったけど『血と骨』は5.5〜6くらいか?

*2:ってもうなくなったんだっけ?