logic system continued.

http;//d.hatena.ne.jp/hello-m/ ではてなダイアリーで12年間書いてたブログ『logic system』から引っ越してきたので、その続き、という意味での『continued』。

ずっと気になってた。

土曜の夜、仕事が週末に及んだり、遊びで外に出たりして、電車に乗って帰ってくると、必ずストリートライブをしている女性のギターの弾き語りがいる。それも単に学生の遊びでやってるような流しじゃなくて、きっちり自分の宣材写真やフライヤーまで用意してある。駅前のストリートライブ。それ自体は別に珍しいことじゃないけど、思うのは、「なんでこんなへんぴな、人も集まりそうに無い駅で?」と、ずっと気になってた。
ほんの数駅先に行けば、若者が多く集まり、ストリートライブやパフォーマンスなんてしょっちゅうやってて、足を止める者もたくさんいる。だけどうちの地元の駅は急行も止まらないし、特に栄えている訳でも無い、普通の住宅街や商店街の最寄である。いっつも気になってた。「なんでここで?」と。
一度だけ足を止めて、1曲くらいは聴いたことがあった気がする。わりと好みの曲調だったので、それ以外にも何度も足を止めてはいたが、「またやってる」くらいにしか思わず、数歩程度止まって通り過ぎ、家路を急いでいた。
今日、仕事で嫌な思いをした。別に直接的に何か事件でもあった訳じゃないが、如何ともし難いストレスに覆われた1日だった。1日中何も口にしなかったのも原因の一つかもしれない。しかし、帰りの電車の中で、家に帰って暖かいものを食べて寝よう、と思う前に、「今日は土曜日だったよな」と思っていた。
そして今日、初めて意識して、彼女の立っている場所に足を進めていった。風は冷たく、外も寒く、空腹もきつかった。だけどその場に吸い寄せられた。秋口なんかはもう少し人がいたはずなのに、今日は自分を含めて5人しか聴いていない。時々、酔っ払いが茶化しに来たり、バイクの音に邪魔されるだけだ。自分はパーカーにコートで寒いのに、彼女はセーター1枚でギターを弾いている。寒いとか思う前に、歌うことに熱中してるんだろうな。歌声はすっと自分の中に入っていった。1曲聴いたら、さぁ帰ろうか、と思いつつも、次の曲のイントロが流れる度に、耳の方から惹かれていって、足がそこから動かなくなる。真ん前で見てるくせに曲中で帰るのは失礼だし、何より、何曲も聴いてるうちに、忙しい日々で忘れていた「ライブの良さ」を思い出しかけていた。
同時に、完全に聴き手となっていた自分を顧みて、「表現者としての自分はもはや完全に枯渇してしまったのか?」という予感にもかられた。ただ聴いていて満足、なんて事は今まで無かったのに。確実に「向こう側に回れれば」、最低でも「自分だったらこうするかな」くらいの思いは芽生えていたのに。今日の歌声は、ひたすら疲れた体に染みるのみだった。それは決して悪いことではないが、一抹の不安もあった。いや、最大の不安は、その予感を不安と思わなかったことかもしれない。答えを見出すには少し疲れすぎている。
「なんでここで?」の疑問はいまだに払拭されないけれど、自分の地元にこう言う人がいることは、内心では前々から嬉しく思っていた。ずっと、「一度くらい通しで聴きたいなぁ」と思っていたが、ついつい足を止めるには至らず、家路を急ぐのが先になってしまっていた。今日みたいに、明日も仕事があるような時に限って、何か救いを求めていたんだろう。そんなはずは無いと知っていながらも、なんとなく、「聴けるのは今日しかない」という予感を感じてしまい、そこに立って聴いていたのだ。
6曲くらい聴いた後に、ライブの終わりを見届ける事なく、結局はキリのいいところを見つけてその場を去ってしまった。だけど、ライブの途中で、彼女は「よろしくお願いします」と言いながら、フライヤーを手渡ししてくれた。実は初めて手にするフライヤーではなかったものの、少しだけ嬉しかった。
来週また聴けたら、1枚500円のCDを買おうと思…っていたら、予感が的中してしまった。本人のblogによると、来週は別の場所でライブ、再来週はお休みと、2週続けてお休みらしい。残念。じゃあその次の週、また聴けたら。…ん、その日って、うちに全国からいろんな人達が泊まる日じゃなかったっけ?じゃあうちに寄る前に聴かせてやる。「これがうちの地元が誇るシンガーだよ!」って。