logic system continued.

http;//d.hatena.ne.jp/hello-m/ ではてなダイアリーで12年間書いてたブログ『logic system』から引っ越してきたので、その続き、という意味での『continued』。

abc〜かく戦えり〜Pt.13

【誤2・決勝】

◇1番手から席につき、正解すると次のメンバーにバトンタッチ。
 誤答は1番手からやり直し。1番手の誤答は問題を読みきって相手に解答権が移行。
◇3問続けてどちらも押さない場合は、両チーム1番手からやり直し。
◇5番手が正解した時点で、チーム全員に書き問題を出題。
 1人でも誤答したら1番手からやり直し。チーム全員が正解したら優勝。

ダイビングサークル・中央特快
名古屋大学クイズ研究会
【壱番手】
峯 智 (22歳/72点)
山下 侑紀 (20歳/65点)
【弐番手】
喜多 一興 (23歳/76点)
竹内 健 (19歳/59点)
【参番手】
松本 鎮成 (22歳/60点)
木本 博幸 (19歳/58点)
【四番手】
高村 光貴 (22歳/78点)
梶田 聖和 (22歳/61点)
【誤番手】
大須賀 信裕 (22歳/69点)
丸山 泰弘 (22歳/60点)
【予選壱】
vs. 大阪大学クイズ研究会(OUQS) 【5-4】
vs. 無名塾 【5-3】
【予選弐】
vs. HQS(一橋大学) 【5-2】
vs. AQC(あさひ屋クイズクラブ) 【5-2】
【準決勝】
vs. 琉球大学クイズ研究会with僻地ーず
vs. 伊達クイズ連合
【5-4-2/誤・挑戦2回】
vs. RUQS(立命館大学クイズソサエティ
vs. 早稲田中学高等学校クイズ研究部
【5-3-5/誤・挑戦1回】
【決勝】
vs. 名古屋大学クイズ研究会
vs. ダイビングサークル・中央特快

  • 年齢の後の点数は前年度の予選成績(前年度ボーダーは64点)

冷静に考えたら、決勝と言うことで、観てる方にしてみれば注目の一戦だろう。しかし、他のメンバーはどう考えていたかわからないが、相変わらず自分は冷静だった。少しでもモチベーションが上がっていたとしたら、「まだクイズやり足りない」と言う感覚だけだった気がする。ただ、相手が名古屋大学と言う、総合力の高いチームだったので、いい勝負が展開されるだろうなと、他人事のように期待していた。「関東nobu氏軍団」対「元祖・野武士軍団」と言うことで、峯が「偽ノブシですね」と不敵なコメント。誰かがそれを言うのがお約束。そして、大須賀は「優勝したいです」と強い意気込みを見せる。正直、大須賀をリーダーに決定した時、ここまでやる気をあらわにするとは思っておらず、大会中ずっと「勝ちたい」とコメントしていたのが意外だった。やるからには負けたくないんだけど。そして、1番手がステージに上がる。「FIGHT!」

『ことわざで、ただでさえ勢いが盛んなものを、さらにあおり立ててしまうことを、「火に/』「油!」

タッチの差で押し勝ったのは相手側だった。しかし、直後に「岡本依子」と聞いて「テコンドー」を峯が正解、先走った喜多が「国富論」を誤答、「スクラブ」の正解で峯が取り返し、「パイロットランプ」スルーの後、「二束三文」から「わらじ」を正解。この間、名古屋の2番手・竹内は全く動けず。そして自分の番がやってきた。

『これまでに、野茂英雄小宮山悟、新庄/』あたりで押された気がする。「ニューヨーク・メッツ!」ダメだ、スポーツは苦手だ。アメリカにいてもスポーツは全く見てなかった。スルーを挟んで、『ハンフリー・ボガートイングリット・バーグマンが共演/』ちょっと早めに動かないと、と焦って押してしまった。「あー違うじゃーん」と言いながら机に突っ伏す。3カウントを見て、仕方が無いので「カサブランカ」と答えると正解だった。あの時はどうもあれは確定には思えなかったのだが、今考えると映画名以外を答えにする事は無いだろう。ともあれ肩の荷は下りた。

続いて、『「中国四大奇書」とは/』いくらなんでも早すぎる押しで、相手が誤答。カンで「西遊記」あたりが答えになるんじゃないか、と思えなくも無いが、ここでその押しはあまりにもリスキーだ(「三国志演義水滸伝金瓶梅と何でしょう?」と続き、正解は「西遊記」)。「カスミソウ」がスルー、『長崎市で行われるものが有名な/』で高村が押すが、「お水取り」と誤答。しかし、相手もリセットしたばかりで、振り出しに戻るだけだ。まだ怖くない。(正解は「精霊流し」)

その後、双方の正解が続き、喜多がタッチの差で「かばん」(選挙に必要は3バンとは〜)を押し負けるが、「坪内逍遥」を正解し、相手が2番手のところに自分の番。『温度の単位である「セッ氏」の語源/』「…いいんですか?セルシウス」ちょっと早すぎたと思ったが正解。自分が押さないと進まない、と言う焦りが、いい方向に進んでいる気がする。その直後『モスクワのラバ/』と言うとんでもないポイントで両者が押すが、この「モスコミュール」を取ったのは高村。そして、『お互いの気持ちがしっくりといくこと、意気投合することを、ある動物を使って/』「馬が合う」なんと喜多から数えて4連答で、最初のチャンス。まずここで勝てるとは思えないが、さっさと進められるのは嬉しい。

ベネズエラ北西部にある、南米で一番面積の広い湖は何湖でしょう?』

うわーわかんねぇ。どっかで聞いた気もするけど思い出せない。仕方が無いので「チチカカ湖」と書くが、正解は「マラカイボ湖」。正解していたのは喜多のみだった。まだまだだ、まだまだ。

「マーチ王」こと「スーザ」を相手に取られるが、「チェルノブイリ」「引き出物」と連答。こうして記録にしてみると、特快が勢いで押しているように見えるが、個人個人で答えているのでそう言う実感は無かった。『地震の震度の目安で、「寝ている人が目を覚ますこともある」と定義されているのは震度いくつでしょう?』ここではじめて、対戦相手と目を合わせ、「さすがにこれは手を出さないよな」と言わんばかりに、双方とも軽く笑顔を浮かべる(正解は「震度2」)。激しい試合の中の一時の休息を経て、次の問題の声と共に緊張が戻る。『中根式、早稲田式、衆/』早稲田式なんて言葉、これでしか聞いたことねぇよ!「速記!」ビンゴ。バカみたいにカンが冴え渡っている。そして高村が「長野」を正解、あっと言う間に大須賀に回ってきた。だが、いい加減黙ってはいないぞとばかりに名古屋の4番手・梶田が「還俗」を正解、そして5番手同士の対決は、丸山さんが「スモッグ」を正解してあっさりと決まる。まだ勝ち抜けは無いだろう、こっちも5番手だし大丈夫だ、と思いきや…。

『日本の建築士の資格は全部で3種類ありますが、それは一級建築士二級建築士と何でしょう?』

やばい。またも当たり問題引いてきた。終わるかもしれない…完全に頭をたれていた。その一方で、落ち着いていた自分もいて、何なんだ一体、とも思っていた。喜多や峯には「まぁ決まったら仕方ない」と言われた。たしかにもう、この時点ではどうする事も出来ない。そして…。

「1番手・山下君!」黙ってボードを上げる。正解音が鳴る。「2番手・竹内君!」「…ごめんなさい!」

「残る3人の答えは…木造、木造、木造!」会場からは「あ〜」と言う哀れみの声。自分はと言うと、完全に終わったと思っていたため、救われた感覚で一杯だった。待っていたあとの3人は至って冷静である。他人事のようだとか言っていた自分が一番、リアクションを取っていた。ほぼパフォーマンスの意味もあったが、やはり心のどこかで、「負けたくない」と言う思いが強かったのだろう。

しかしこうなると、名大はチャージで巻き返すしかない。1番手・山下が「サロマ湖」を速攻で正解。こちらは祈るような思いで大須賀を見つめる。すると…『現在発行されている通常切手で、一円切手に/』「前島密!」特快勢が沸く。書き問題を選ぶ大須賀、「これで決めたいんで、5番でお願いします」確かな覚悟が出来ていた。ここで外しても、この勢いならまだ取り返せる…などと思ううちに、問題が読まれる。

コンコルド広場とエトワール凱旋門を結ぶパリの大通りで、有名なシャンソンのタイトルにもなっているのは何でしょう?』

ほっと胸をなでおろした。峯が「これで決まったら歌おうぜ」と言う。しかしさすがに今の状態でそれが出来るかどうかは不安だ。そして1人ずつ、ボードを上げる。

「1番手・峯君!」正解音。「2番手・喜多君!」正解音。「3番手・松本君!」正解音。「4番手・高村君!」正解音。「そして、5番手・大須賀君、答えをどうぞ!」

シャンゼリゼ通り!」

全員がガッツポーズ、そしてハイタッチ。終わった。終わってしまった。勝ったと言う思いよりも、とにかく「あー終わっちゃったなぁ」と言う思いが強かった。1人ずつコメントを求められ、初めて自分にマイクが向けられる。「まぁ真剣な話、abcの方が不本意な結果だったので、最後に勝てて嬉しいです」無難なことしか言えなかった。だがそれがその時の全てだった。高村が、「隣にいる松のテンションとか見てると、自分みたいなのがホントにここにいていいんだろうかって思っちゃうんですけど」と言う。やっぱり傍から見ればそうなんだろうな、と苦笑する。喜多が、「また去年のグランドスラム戦みたいな事無いよね?」と言ってくる。「時間的にさすがに無いだろ、あったら俺帰るよ」と返した。

とにかく、優勝である。チーム戦とは言え、自分にとっては初のタイトルと言ってしまっていいのかもしれないが、やはり実感は沸かなかった。終わった後に、「優勝おめでとうございます」と言われる度に、「俺じゃない、他の4人が強かったんだよ」と言い続けた。チーム全員が同じことを言っていた。本当は渋沢と一緒のチームで、この戦いに挑みたかった。だが終わってみれば、この5人から誰かが欠けることは、俺には想像がつかない。

自分達のようなチームが優勝してしまうのは失礼かもしれない。本当はもっと優勝にふさわしいチームが他にいたかもしれない。だが、特快が秀でていた要因が一つあったとすれば、それはメンバーの絆だったと思う。他のチームの絆が弱かったとは言いたくないが、メンバー間の信頼は他のどこよりも強かった、と自信を持って言える。それがこの結果なのだろう。名古屋大学の皆さんをはじめ、自分達と当たった全てのチームに感謝すると同時に、特快のメンバー、チームだけではなく応援席で見ていた全てのメンバーに感謝したい。


【誤2〜第3回学生クイズサークルNo.1決定戦トーナメント〜】

  • 優勝:中央特快(峯 智、喜多一興、松本鎮成、高村光貴、大須賀信裕)
  • 準優勝:名古屋大学(山下侑紀、竹内 健、木本博幸、梶田聖和、丸山泰弘)
  • Winning Answer:「シャンゼリゼ通り」
  • (「コンコルド広場とエトワール凱旋門を結ぶパリの大通りで、有名なシャンソンのタイトルにもなっているのは何でしょう?」)
  • 早押しランキング1位:高村光貴(中央特快)「モスコミュール」(「モスクワのラバ/」)

【abc-the second-決勝・バレーボールクイズ】

◇15pts.先取の3セットマッチ。先に2セット先取した人の優勝。
◇正解は+1pt.、誤答は相手に+1pt.。
◇14対14になったときはデュース。2pts.の差がつくまで行う。
◇各セット、どちらかが8pts.先取で「テクニカルタイムアウト」が入る。
 また、各セット1人1回まで「チャージドタイムアウト」が行使できる。
 タイムアウトは各30秒間。この間、席を離れ作戦を練ることが出来る。

立命館大学・2年生
早稲田大学・1年生
古川洋平
石野将樹
【1ラウンド】
1位 (86/100点)
3位 (81/100点)
【2ラウンド】
第1組・2抜け (5p・1×)
第3組・2抜け (5p・0×)
【3ラウンド】
10○10×・1抜け (10○5×)
10 up-down・2抜 (17○1×)
【準々決勝】
第1セット勝ち抜け (9p・9○0×)
第3セット勝ち抜け (27p・19○4×)
【準決勝】
1抜け (4○1×・通過席1回)
2抜け (4○1×・通過席1回)
【決勝】
vs. 石野将樹
vs. 古川洋平

誤2での戦いを終えると、廊下では決勝を戦う2人がスタンバイしていた。両者に向かって「頑張れよ」と言うが、石野にだけは「あいつの3連覇、阻止しろよ!」と言う。古川洋平・対・石野将樹。盟友対決と言うべきか、師弟対決と言うべきか。高校時代から共に戦っていた2人が、最高の舞台でぶつかり合う。ポール・トゥ・フィニッシュを阻止するか、それとも前評判通りの実力で最後まで戦い抜くか。やっと拘束から解放されて、元の席に座って観戦できる。ただ峯は、石野のセコンドについていた。誤2の間着続けていた、狐面のままで。

『アメリカの小説家で、「怒りの葡萄」を書いたのはスタインベックですが、「響きと怒り」/』「フォークナー!」

いきなり対策問題が来た。正解したのは古川。やはりこの男なのか。4問を終えて2-2、しかし「狩野永徳」「リスト」「経済白書」「のし」「バラ戦争」「ナン」と古川が怒涛の6連答、8-2でタイムアウト。あまりにも格が違いすぎる。たった30秒で、この流れが変わるものか…と思うと、タイムアウト明けの「ナン」を「チャパティ」と誤答、それを受け石野が「雷電為右衛門」を正解、差を詰める。だがそこから石野が押しても誤答が続き、結局12-4。かと思うと、古川が3回の誤答で、12-8。だが、「たかが3×」と言えてしまうほどの一人旅。石野に入った4点のうち正解は1つだけ。勝負の流れをコントロールするには至っていない。どうにかこれを逆転への橋掛かりにするつもりか、直後に古川が正解したところで石野がタイムアウトを入れ、明けて「西行」を正解するが、「早にえ」で古川がセットポイント。そして『2月14日に10作品が発売された/』「ファミコンミニ!」と落ち着いて正解。

15-9。古川14○4×、石野5○2×。格が違う。スルーが入る間すら無い。残酷なまでの実力差に、会場は言葉を失った。奇跡を願う声すらもはや途絶え、勝利への階段を一歩また一歩と登る古川の背中を、ただ見つめるだけだった。

第2セットは石野の誤答から開始、そのまま7-1とまたも6点差。石野がもう2点重ねるも、『日本の都市で半濁音がつくものが3つありますが、それは札幌市、別/』「南アルプス市!」古川の正解でタイムアウトへ。これで終わりか…石野がなんとか一矢報いるものの、古川のマッチポイントは石野の誤答でついた。そして勝利のベルが鳴る。

『ズバリ、パンダのしっぽの色/』「白!!」

立命館大学・2年生
早稲田大学・1年生
古川洋平
石野将樹
15(14○4×)
(5○2×)9
15(12○1×)
(5○2×)6
WIN
LOSE

古川には申し訳ない話だが、大会が始まる前から、「誰か古川(の優勝)を止めろ」といろんな人間に言っていた。他人に言う前にまず自分が頑張れ、と言われそうなところだが、自分にそれが出来ないのはわかりきっていた。その時点でそんなことを言う資格は無いのだが、とにかく古川を止められる人間が誰もいないだろうと思っていた。古川にはうらみは無いが、結果がわかりきっている勝負なんてつまらない。全てのラウンドにおいて、「誰か古川を潰さないか」とずっと思っていた。

だが、それを思っていたのは自分だけではないはずだ。本人にだって、「勝って当然」と言う評判を受けてのプレッシャーもあったはずだ。そして、いくら知識も実力も兼ねそろえていたところで、勝負事には何があるかわからない。その全てを跳ね除けて優勝した古川洋平に、会場からは最大級の賛辞が贈られた。自分も、精一杯の拍手で、古川を迎えた。

こうして、長い一日はその幕を閉じた。

【abc -the second-】


【懇親会、その後】

懇親会の会場では、何とも言えない気持ちに包まれていた。1日の興奮と、「終わってしまった」と言う空虚さが混在していた。古川に「優勝おめでとうございます」と言われる。あ、そう言えば優勝してたっけ、特快で。こっちも「優勝おめでとうございます」と返す。考えてみるとすごいやり取りだ。部屋の隅っこで、三位決定戦が行われていたが、会場の賑わいでよく聞こえなかった。

何より印象に残っている、と言うより驚いたのは、つい1ヶ月前に初めて会ったばかりの(と言いつつネットではもっと前から知り合っていた)寛子さんに、「クイズやめるなんて言わないで下さいよ」と言われたこと。大会に先駆けて、「abcが自分にとって一つの区切りになると思う」とはてなに書いた。それは今後、ここまで真剣にやる事はもう無いだろう、と言う意味で書いたのであって、完全に離れる訳では無い。とにかく、スタンスが変わるだけだ、またどこかで会えるだろう、と伝えた。ただ、この大会が終わることで、もう積極的にクイズに取り組むことがなくなることは確実だった。

前日も10人泊めていると言うのに、1人になりたくなくて、古川や喜多など7人を家に泊めた。終わってしまえばノーサイド。ラーメン屋で喜多と、1日の感想や今後のことをしみじみと語り、家に着いてからビールで乾杯。特快の喜多とこの瞬間を迎えられたことが一番幸せだった。古川やその友人らとバカCDで盛り上がって、問題集を使って残りの問題で早押しをして、そのまま眠りについた。古川らは関西に戻り、最後は喜多が昼過ぎに家を去った。


【戦い済んで】

「クイズごときに何熱くなってんだ、バカじゃないのか俺」「こんなマイナーな趣味に延々と時間割いて、もっと他にやることあるだろ」こんな言葉が頭を去来したことは一度や二度では無い。この手記を書き終えようとしている今でも、少なからずそんな思いがある。

でも、どんなにばかばかしいことでも、熱くなるからこそ、面白い部分がある。本気になるからこそ、楽しい部分もある。本質的にクイズとは競技である以上、今までやってきた映像などの創作とは、その「楽しさ」の性質が違う。創作は一つ一つのプロセスの積み重ねで、完成形に向かう充実感が味わえるが、勝負事は何が起こるかわからないだけに、博打的な楽しみが大きい。そして何より、その博打に賭けるスリルである。(競技ではないクイズもあって、それ故の楽しみもあるだろう、と言う意見についてはここでは語らない)

abcにここまで強い思いを抱いていたのは、学生限定と言うレギュレーションが大きかったと思う。自分が一緒にクイズをやってきた連中同士で、大勢の前で真剣勝負がしたい。そのために、ここまでやってきたんだと思う。勝負に「if」は禁物だが、「あの問題で勝負をかけていたら」「敗者復活でもっと本気になっていれば」などと、今でも思ってしまう。そこまで悔しいと言うことは、それだけ本気だったのだろう。悔しさと共に、「本気」をぶつける場があった事を、心から幸せに思う。

先に述べた通り、クイズを辞めると言うことはないだろう。ただ、距離を置いて、ゆったりとやっていきたいと思う。自分が本来やってきた映像制作に戻るなり、言語系の仕事をもっと精力的にやっていくなり、とにかくもっと違う事を、今の自分はすべきだと思う。所詮、クイズは現実逃避だと思っている。現実に戻るべき時期は、もはやとうに過ぎている。

そんな時間の中で、ただ一つ現実があるとすれば、それは中央特快をはじめとした、クイズで知り合った人間達だろう。この手記は客観的に大会を振り返る文章ではなく、あくまでも自分の視点、自分の体験を追うための文章である。その点において、大会前までの特快の例会や、対策でうちに泊まった連中などの描写が不可欠であり、それぞれのクイズの場面は特快を中心に書かれている。それほどまでに、特快と言う存在が、「クイズをする自分」にとって大きかったのだ。同じクイ研非所属の渋沢がいなければ、自分はここまでクイズをやっていなかっただろうし、特快と言う存在が無ければ、1年の半分以上日本にいなかった自分がクイズを続けるなんて、ありえなかっただろう。

「abc〜the second〜」、及び「誤2」に関わった社会人スタッフの皆様、あの大会の場にいた166人の参加者の皆様、とりわけ自分に声をかけて下さったり、事前に触れ合ったりした皆様、そして誰よりも、中央特快のメンバー全員に、心から感謝致します。

今度の日曜は特快の例会。みんなに会ったら「ただいま」って言おう。そこが自分の帰るとこ。

(了)


以上の手記は、2004年3月21日に開催された、「abc〜the second〜」及び「誤2〜第3回学生クイズサークルNo.1決定戦トーナメント〜」の体験記として、同年3月23日から4月16日にかけて、「はてなダイアリー - logic system」に連載されたものです。筆者の記憶と、断片的な記録を頼りに書いているため、勝負の展開や問題の押されたポイントなど、一部事実と異なる場合があります(一部記録の保全のために、まあくんのにっきちょうを参考にさせて頂きました。この場でお礼申し上げます)。また、一部大幅に主観的であると思われる部分もありますが、これらは全て、当日の筆者の体験や考えを反映しているものであるため、基本的に連載中の修正は致しませんでした。重大だと思われる校正・編集に関しては、後日改めて行います。個々の記述へのレスなどは、後日まとめて行いますので、もう少しだけお待ち下さい。
読者の皆様においては、長きに渡る連載にお付き合い頂き、本当にありがとうございました。クイズの話題が理解出来なかった皆様においては、申し訳ありませんでした。明日以降は、通常の自称音楽日記に戻りますので、どうぞよろしくお願い致します。